アカデミー作品賞にノミネートされたとあっては、見なくてはとアンコール上映を観てきました。
カンヌもベルリン、ベネチアも必ずしも受賞作品が娯楽作品とは限りません。
見始めてまず思ったのは、昔イタリアのフェリーニ監督の映画でこの出だしを思い出させる、主人公の映画監督が自身の生活と、撮影中の映画とをダブらせて、人生を回顧する、そんな映画に、村上春樹作品の少し生々しさが入ったタッチを感じました。
ところが、中盤の演劇オーディションのあたりから、セリフと軽めの音楽だけで魅せるストーリー展開に、緊張感が出始め、登場人物すべてが絡み合った、伏線ひきまくりの、これは本の世界から飛び出した、映像世界にしか表現しえない、小さな物語ですが、映像、映画技術のたくさん詰まった見事な作品です。
同じく今年の作品賞ノミネートの「ウエストサイドストーリー」同様に3時間近い上映時間がとても短く感じます。
正直、村上春樹作品の良さはそれほど、いや、夏目漱石のそれと同じくあまり好きではありませんが、こんな風に前向きに解釈すれば、これは真の意味で読者の想像力をかき立てる文学と呼ばれるのだと、この原作短編集もこれから読んでみたくなりました。
そして、なんといっても配役がいいです。毎度、路頭に迷う西島秀俊さん、(この作品の悩みが一番大きいのですが)彼なしではこの作品は退屈なものになってしまった可能性もあります。そしてドライバー役の女優さんの無口な中に、過去を語りたがらない、社交性のない表情がこの映画のイメージになりますが、それが西島秀俊さんの陰に重なる様です。岡田将生さんも重要な役ですが、起承転結の転の大事な役です。
3年連続でアカデミーはアジア系監督になびくのでしょうか?昨今のグローバリゼーションを考慮すればこの作品は射程距離に入りますし、「半地下の家族」より数段芸術的、技術的です。少なくとも外国語映画賞は硬いのではと思います。
☆☆☆☆
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前嶋 (火曜日, 22 2月 2022 17:58)
村上春樹先生の作品の良さは、言い表せない雰囲気、どの作品でも独特の雰囲気が感じられるとこじゃないかなと思います。
中毒性です。
前田 (火曜日, 22 2月 2022 22:10)
3時間もある映画館なんですね。
特にアクションなしで、緊張感もあるって想像つきにくい映画ですね。やっぱり見なくては。