8日にNHKBSで放送された「黒澤映画はこう作られた」はよかったです。
以前にも見たことのある、「乱」「七人の侍」「影武者」の制作撮影風景に加え、仲代達矢さん、木村大作さん、黒澤監督のご長男が「トラトラトラ」の制作時のトラブル、自殺未遂などにも語る映像を興味深く観る事が出来ました。
中でも、山崎努さんがこういったインタビューに応じるのはとても珍しいのですが、「恩のあるあの人のために話させてもらいました。」と涙目で語る最後は、山崎さんの年輪も感じさせましたが、人間味のある言葉です。
そして、山崎努さんが26歳で黒澤監督に「天国と地獄」の誘拐犯役をオファーされた時のエピソードとして、
「怖くて、不安でやる自身がない」と漏らしたところ、あの当時は恐ろしい監督が
「一生懸命やってみなさい、人の目なんか気にしなくていい、ただ、がむしゃらにやってれば、いつのまにか終わってるものだよ。」
と諭してくれた事に対して、
「僕はあの言葉を今でも大切にしている。」
と言っていました。
この「天国と地獄」の山崎努さんの演技はハリウッドでも演技のお手本にされており、マイケルダグラスさんが、高倉健さん、松田優作さんとのパーティーに山崎努さんが同席した際に「これが、あの天国と地獄の犯人を演じた男か?」と映画完成から30年後の山崎さんを見てひれ伏した逸話があります。
こんな番組を見ると、受信料も無駄ではないと思ってしまうのです。
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遠山 (火曜日, 10 11月 2020 22:07)
「がむしゃらに、一生懸命」よく上司から言われた記憶がありますが、黒澤監督の言葉だったのですか?昨今は聞かれなくなった言葉です。でも、たぶん山崎努さんを安心させたのは、いつのまにか終わってるものだ、という部分です。
ミシマ (水曜日, 11 11月 2020 07:00)
黒澤組は毎晩スタッフ、キャストが食事を共にしていたそうです。昔の映画製作はそれがチーム力の源だったそうですが、現在ではそれが、組織から若い力が離れていく要因になったりします。
神谷 (木曜日, 12 11月 2020 08:28)
これはイイ番組でしたね。映画作りに携わる人材不足のなか、「映画監督になってみたい」と思わせる内容でした。「瞬間、瞬間を夢中でやっていれば、いつのまにか終わってるものだよ」と正に黒澤監督の全盛期はそうだったんだと思います。
kamoshita (木曜日, 12 11月 2020 20:40)
黒澤監督の作品の中で、時代劇よりもこの天国と地獄が一番好きです。犯罪者側の立場からの完全犯罪の組み立てを、映画の後半ではそれを上回る、警察の捜査努力が観客に訴えかけるのは、それこそ瞬間、瞬間、懸命に作っていたからだと思われます。