BS放送で「ギャング・オブ・ニューヨーク」を観ます。
この映画は2001年のニューヨークテロ時に公開が予定されていたのが、爆破されたビルがラストに映っている事から公開が延期され、公開されたら、その内容がテロを連想されるとして、上映中止にする映画館がアメリカ国内で続出したことを思い出します。
しかし、映画はそんな時事的なタイミングは抜きにしても、スコセッシ監督の集大成の様な思いがつまった、技術的にも最高位の作品です。何よりも語り口が映画でなくては出来ない、文学や、写真だけでは不可能な映像表現が旨い脚本の下、なされています。特に、ギャングの争いから、アメリカ南北戦争、徴兵制への流れ、ニューヨークの貧富の格差、有色人種差別を、ワンカットで船に乗り込む主人公を映しながら、語る様子は、脱帽モノです。
いい映画には、いい役者が揃うものですが、レオナルドディカプリオやダニエルデイルイスはもちろん、この映画のキャメロン・ディアスがとても光っています。
そして、胸に響くセリフが次々に語られ、U2の音楽できれいに流されていきます。
それにしても、150年以上も前のニューヨークの実話ですが、現在の移民排除政策と全く同じ争いが起きており、その後にはアメリカが南北に分かれて戦った歴史が、そのまま解決されずに続いている事がよくわかります。
そして、戦争は空爆や海洋戦略よりも、陸上の接近戦が一番恐ろしい事を、凄まじい描写で教えてくれます。
ラストの現在のニューヨークの描写がとても感動的です。 ☆☆☆☆
コメントをお書きください
タカハシ (月曜日, 05 8月 2019 15:28)
これを映画館で見た時、エンドロールにU2の曲が流れてとても感激したのを覚えています。
エンドロールをつい最後まで見たら、音声で9.11の現場音声が流れ、上映延期になったことを逆手にとる、その手法にさらに感激してしまいました。
tomita (火曜日, 06 8月 2019 12:31)
スコセッシ監督の語り口は、彼の実際の話し方に似て、早口のように見えますが、5分ほどで1週間の流れをスムーズに説明してしまうマジックがあります。タクシードライバーの1日、ラスベガスカジノの金の流れ、この映画では、ギャングの抗争から市長選挙までが5分以内で明解に語れれており、そこが名監督のゆえんだと思います。
遠山 (水曜日, 07 8月 2019 08:53)
ダニエルデイルイス、めちゃくちゃ憎らしい、悪役ですが、このおかげで、ディカプリオもキャメロン・ディアスにも肩入れして観れちゃいます。これも演出の力ですね。数年後ダニエルは全く反対のリンカーンを演じますが、こちらも良かったですよ。